先週末、表題の研修会に参加してきました。主宰は東京私立中学高等学校協会です。都合がつけば、年に1回開催されるこの「地学の講演会」には参加しています。また、理科以外の括りでも、有意義な研修を行ってくださっています。例えば、このへん
5/19(金) 実施 環境「放射能汚染地図の今」 « 東京私学教育研究所
http://k.tokyoshigaku.com/seminar/seminar-kenshu/seminar-kenshu-kankyo/2495/
とか、このへん
7/31(火)実施 技家「講演会①」のご案内 « 東京私学教育研究所
http://k.tokyoshigaku.com/seminar/seminar-kenshu/seminar-kenshu-senmon/3013/
とか。
特に「放射能汚染地図の今」という研修会は、とても印象に残っています。参加したレポートを作成しようと思いつつ、既に1年以上経過してしまいました。内容が豊富で多岐にわたり、かつ軽々には論ぜない内容であるため、レポート化できずにいます。
今回は以下のような内容でした。
日時 平成30年12月7日(金)18:30~20:30(予定)
会場 アルカディア市ヶ谷(私学会館)会議室
講師 岡田誠 氏(茨城大学理学部 地球環境科学領域 教授)
演題 「チバニアンと地質学」
以下に覚書を。
---地層に残る「地磁気強度」---
地層(や氷床コア)に残る10Be(ベリリウム10)の量によって、当時の地磁気の強弱(N,Sの極性は分からない)についての情報が得られる。太陽系外からやってくる宇宙線の量は、地球磁場が弱まった場合に増える。これらは大気中の酸素、窒素原子を破砕し、結果として10Beとなる。---「地質時代」の決定法---
1976年までは、「特定の時代の模式的な地層」が決められていた。(「どこから始まり、どこで終わるのか」が不明瞭だった)
1976年以降、「特定の時代が『始まる』境界」を決定する方式に改められた。その「始まり」に「ゴールデンスパイク(画像ググリンク)」が打たれることになった。
参考
日本地質学会 - 地質系統・年代の日本語記述ガイドライン
http://www.geosociety.jp/name/content0062.html---「ゴールデンスパイク」が打たれる条件---
・連続的に海底で積もった地層であること(通常は泥岩)
・示準化石などが産出すること
・地層の変形が少ないこと
・アクセスが容易なこと(割と重要な点であるらしい)
など---「ゴールデンスパイク」の永続性---
スパイクの場所は10年後に「見直し」が可能になる。そのため、スパイクの位置が変更になる可能性も残る。ただし、いちど「地質時代」の名称が設定されれば、それは不変である。(チバニアンという名前が採用されれば、ゴールデンスパイクがどこに打ち込まれようとも、チバニアンという「地質時代の名称」は今後変わらない)---17O(酸素17)について---
酸素17は、太陽からの距離によってその存在比が変動する同位体である。月の成因とされる「ジャイアントインパクト説」の補強にも使われた技術である。---有孔虫について---
単細胞生物のくせに、殻にある口から針を出し、ミジンコなどを餌とする場合もある生物である。(私は、「生物としての有孔虫」について、今まで全く興味を覚えていなかったことに気づかされた)
参考(科博のサイト)
有孔虫
https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/bikaseki/2-yukochu.html---堆積物の磁性強度について---
場合によっては、直流電源を用いている地下鉄の床に「サンプル」を短時間置いただけで、泥岩中の残留磁気は上書きされてしまう。
で、今回まで私は知らなかった話があった。
千葉時代(チバニアン)の解説
https://sites.google.com/a/nipr.ac.jp/chibasection/Home
の末尾にもあるのだが、
市原市田淵の現地(千葉セクション)に展示してあります全ての看板・標識等は,我々が設置したものではなく、我々の研究活動およびGSSP申請活動とは一切無関係です。
ということらしい。
別ページ
「千葉セクション」の国際標準模式地認定へ向けた審査状況について - 千葉時代(チバニアン)の解説
https://sites.google.com/a/nipr.ac.jp/chibasection/Home/tian-yuanno-lu-touno-hang-biao-shinitsuite
に書いてあるが、あの看板は「古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会」なる団体?が設置したものであり、講演をなさった岡田誠氏の所属する「千葉セクションGSSP申請グループ」とは異なる団体なのだそうで。
また、
「チバニアン」斜面に見学用コンクリ階段 市は困惑:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASL223T3WL22UDCB00F.html
にあるように、私がこの夏に利用した「階段」についても、「申請グループ」の方々は苦々しく思っている様子であった。
んー、大変ですねぇ。
この講演会自体は色々と初めて聞く話も多く、大変ためになりました。ここ数年間の東京私立中学高等学校協会(≒東京私学教育研究所)主催の「地学の講演会」では、一番面白い内容でした。
過去の関連する日記
模式地がパワースポットぉ?(2017年7月)
にっき(2018年8月)