赤祖父俊一『正しく知る地球温暖化』

約8年前に気象予報士の木原さんに「赤祖父さんの本は読んだ方が良い」と勧めてもらった本、やっと読んだ。私が読んだのは2008年7月に出版された本だ。

同意でき、重要そうな部分を抜き出す。太字の部分は実際は「傍点」である。

13ページから
IPCCは自然変動を充分研究せず、最初から炭酸ガス放出による温暖化を地球上の重大問題にすることを政治目的にしているため、気候学という学問が歪められてしまっている。気象学者、気候学者で自然変動を否定する者はないはずである(毎日の天気の変化は自然変動にコントロールされている)。もし、現在の温暖化がかつてなかった異常現象であるとするなら、まずその原因を充分突き止めてから対策を立てるべきである。自然変動が主であれば、炭酸ガスの放出を完全に止めても温暖化は続くかもしれない。IPCCは「学者のできることは終わった。あとは政策者の仕事である」というような発言をしているが、とんでもないことである。
具体的にIPCCが第一にすべきことは、小氷河期、自然変動を同定し、その部分を現在進行中の温暖化から差し引くという基本的な学問のステップを踏むべきである。自然変動は太陽の変化と火山活動だけではない。地球を少なくとも四回襲った大氷河期の原因を含めて、まだ原因のわからない気候変動が多くある。一九一〇~一九四〇年に起きた温暖化の原因さえわからないのである。

17ページから
日本の将来にとって最も重要な問題は日本のエネルギーと食料の確保である。まずこのために全力を尽くすべきである。新エネルギー源の開発こそ、世界のリーダーになれる立派なプロジェクトである。あまり役に立たない炭酸ガス放出防止でじり貧になる必要はない。地球温暖化危機は、危機であるとすれば、贅沢な危機である。世界的には、飢饉、水やエネルギーの不足、環境破壊の方がはるかに深刻な危機ではないか。しかし、筆者は炭酸ガス問題を手放しにしてよいと言っているのではない。「エネルギーの無駄を省き、石油資源(化石燃料)をできるだけ子孫に残しましょう」だけで、正確な、役に立つ、そして立派な大義名分となるからである。地球温暖化問題で市民を脅かす必要はない。

97ページから
コンピュータは、ある物理現象の過程が方程式で表されるまで理解できたとき、定量的にその現象を調べるために使う。中世の温暖期、小氷河期、一九一〇~一九四〇年の温暖化、一九四〇~一九七五年の寒冷化の原因はまだ不明であると言ってよい。すなわち、物理過程がわからず、方程式にできないのである。したがってコンピュータを使うことができない。GCM(汎地球気候モデル=Global Climate Model)で証明されなければ小氷河期の根拠はないとするのは、コンピュータの使用法を知らないのか、またはコンピュータ物理過程の思考については人間の頭脳より優れていると信ずるからであろう。これはまったくの誤りである。

98ページから
コンピュータを使う研究者に警告しておきたいことは、コンピュータにより次の四つの可能性があることである。
(1)正しい仮定で観測結果が再現される。
(2)誤った仮定で観測結果が再現される。
(3)正しい仮定で誤った結果が得られる(コンピュータのプログラム・エラー)。
(4)誤った仮定で誤った結果が得られる(当然である)。
どんな科学分野でも、コンピュータがある観測結果の再現に成功したとしても、おそらく(2)の可能性が一番高いのではないかと思う。これは第三章で述べたチューニングが寄与している可能性が高い。すでに述べたように、コンピュータ・シミュレーションの限界を一番よく知っているのは、その研究者のはずである。これを知らなければコンピュータを使う資格はない。大工道具の使い方を知らなければ大工になれないのと同じことである。彼らが、自分の研究結果を学界や一般市民にも認めてもらいたい気持ちはわかるが、限界を充分把握し、発表の言葉には充分注意してほしい。

私は赤祖父さんの言うことを信頼する。だからこそ、これだけの長文を引用させてもらったわけである。
コンピュータの不確実性については、私もこの書籍を読む前から疑問に思ってきた。そして文書にもした。(下にリンクを置いときました。)

この本を読んで新たに知ったことに「IPCCを作り出したのはイギリスの科学者連中である」ということがある。原子力大国のフランスが主導しているのだと思ってました。イギリスでもフランスでも、原子力産業は斜陽化の一途を辿っている気がします。そして日本も...。
また、認識を新たにしたこともあります。「自然科学に疎い人(および記者)は、テレビ等で繰り返し流れる『氷河の崩落シーン』を見ると、地球温暖化を連想させられるようになってしまっている。そして、氷河が雪などから形成され、谷を流れて崩落するものであることを知らないのではないか」という指摘です。そう言われりゃそうかもなぁ、って思いました。

何しろこの書籍を読み、「知らないことは知らない」と認め、学習することを続けようと思った次第です。アマリンクを貼っておきますね。
正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために

って、8年間放置してた宿題をやっと片付けた私でした。本当に学習しようとしているのですかねぇ...?
授業を担当している高校2年生が修学旅行に行ってしまったから、「読む本リスト」を順に当たり、読書レポート作成しました。


過去の関連する日記
BOINC!(2005年11月)
気象庁は勇み足 エコノミストは暴走(2006年2月)
書評 『環境危機をあおってはいけない』(2006年7月)
京速コンピュータと事業仕分け(2009年11月)
気象予測で用いられるらしい「アンサンブル予報」って、似非科学じゃねぇの?(2009年11月)
書評『"不機嫌な"太陽 -気候変動のもうひとつのシナリオ』(2010年5月)

ここにあるのは2017年2月21日 20:43の日記です。

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