まず、アマリンク(Amazonへのリンク)を。
前者『殺人犯...』は、一言で言えば「間違いを認めたり謝ったりすることができない、警察・検察組織を糾弾する書籍」でしょうか。
後者『血痕は語る』については、それほどお勧めしたいわけでもないのだが、念のためAmazonを見てみた。
書評が、悉く「私と同じルートでこの本を読んだ人」のようだった。清水潔氏の著作に複数回出てくる、科学警察研究所(科警研)所属「S女史」の著作であるからだ。
『殺人犯はそこにいる』は、清水潔氏の著作だ。同じ著者の 『桶川ストーカー殺人事件―遺言』を以前に読んだので、『殺人犯...』も読むことにした。というか、この本も職場の図書館の本棚に置いてあったのだ。『殺人犯...』はなるべく多くの人が読むべきであろうと感じた。そんなわけで、この駄文も作成している。
『殺人犯...』に記されていることなどについて、ごく大雑把な歴史の流れを以下に。
1991年:S女史などが中心となって日本に導入したMTC118法なる「DNA『型』鑑定」が、北関東での誘拐殺人事件の証拠として採用され、結果的に菅家利和さんが有罪となる。しかし、後に冤罪と判明。
1994年:同じくS女史などが関わったMTC118法の鑑定結果などにより、福岡県での殺人事件の犯人として久間三千年さんが有罪となる。
2001年:『血痕は語る』刊行。
2008年:久間三千年さんに死刑執行。
2008年:裁判所(東京高裁)が、菅家さんに関わるDNA再鑑定を指示。
2009年:再鑑定実施。菅家さんは殺人事件に関与していないとの結果が出る。
Wikipedia(へのリンク)はお示ししません。福岡県での殺人事件(飯塚事件)については、清水氏が言うように警察・検察側を擁護・援護するような編集が行われ続けている感じです。
なお『血痕は語る』という書籍は、『死体は語る』という法医学者上野正彦氏の名著の二番煎じなのでしょう。『死体は語る』を私が読んだのは10年以上前であるように記憶している。そちらは素晴らしい。念のため。
『血痕は語る』には、以下のような記述がある。74ページから。
われわれ鑑定官の使命は、あくまでも与えられた資料に対して正確な判定を下すことでしかない。
(中略)
科学捜査の方法が進化を遂げるに従って、科学捜査万能の空気が漂っている。そのために、昔ながらの地道な捜査が軽く考えられることを私は危惧している。科学が犯罪捜査に有効であることは確かだが、事件を解決するのはいつの時代も「人間」である。科学は決して万能の捜査官ではない。
182ページから。
DNA鑑定はあくまでも"型"を分類するものである。つまり、型分類を行っているという意味では、本質的に血液型の鑑定となんら変わらないのであり、その精度が高い(型を細かく分類できる)というだけなのである。
(中略)
犯人のDNA型さえ割り出せれば、すぐに事件が解決するように考えるのは、大間違いなのである。犯人はあくまでも捜査官が捜査によって捕まえるものである。そして、DNA型鑑定は、捜査を補佐する役割しか担えない。ここを間違えると、いつかとんでもないことが起こる...。私はそう危惧している。
だそうです...
微妙な告発あるいは未来に起こることへの予感なのか、責任逃れのための布石なのか、その両方なのか。何なのでしょうね。
『殺人犯...』で知ったのですが、有田芳生氏(私は今までそれほど好きでは無かった)は、この「北関東での『連続』誘拐殺人事件」について、国会等で何度も質問をしたのだそうで。
この書籍を見るまで、全然知りませんでした。
ヨシフ氏(スターリンではない)に、少し親近感を持つようになりました。
何しろ「一読に値する書籍」です。
この私の「腐れ日記」を読まれていらっしゃるくらいに文字列がお好きな方ならば、是非この書籍を読んでみてください。