この本(アマリンク)は非常に美しい。黒いバックに美しい画像が「これでもか」と載っている。
しかし、この美しさには難点もある。私の手は脂っぽすぎるようで、黒い紙に指紋がどんどん付着してしまうのだ。
ウェブ上にも、同じ情報を扱ったサイトがある。英語だけど。
http://periodictable.com/
その本を読んで、特に面白いと思った話題をいくつか。
「ナトリウムが封入されたエンジンバルブ」
ナトリウムというのは、熱伝導が重要視される場所で用いられることがあるのは知っていた。一番有名なのは、高速増殖炉「もんじゅ」であろうか。
ネット上で「エンジン バルブ ナトリウム 封入」で検索してみたところ、日産スカイラインGT-R(R32)がそいつに該当するらしきことが分かった。吸気バルブではなく、排気バルブの方にナトリウムが封入されているらしい。
職場にはスピードジャンキーの同僚がいる。まさに上記スカイラインに乗っているのである。彼に「N先生のスカイラインのエンジンバルブって、ナトリウムが入っているらしいですが...」と尋ねてみたところ、「そうらしいよぉ」という返答を得た。何でも「カタログにも『ナトリウム封入』が謳ってあった」とのことだった。さすが、カーキチである。改めて彼と日産自動車に感心した。
「犠牲陽極」
そのようなもの、全く知らなかった。亜鉛が使われる場合が多いらしい。「鉄製で錆びさせたくないもの」に、この「犠牲陽極」というものを接続するそうだ。
「ブリキは錆びやすいが、トタンは錆びづらい」というのは、高校化学では必須の知識だ。しかし、私の知識はそこどまりだった。「犠牲陽極」というのは、まさに「錆びさせる(イオン化させる)」ために、橋脚やら船体やらの「鉄製の構造物」に接続される金属塊なのだそうだ。鉄の「身代わり」となって溶けていく存在だが、その画像はとても美しく、印象深かった。
「ガリンスタン」
水銀の代用物として、「ガリウム・インジウム・スズ(スタンタム)の合金」があるそうだ。全く知らなかった。
ま、特定の金属の合金は融点がやたらと低いコトは知っていたが、そいつが「体温計」に使われていることがあるなんて、全く知らなかった。「体温計の中の銀色の液体」はすべて「水銀」だと認識していた。
今後は、生徒に水銀を説明する際、「あの体温計に入っている...」とは簡単に言えなくなった。
ま、普通は電子体温計だろうけどね...
「Movable Metal Type」
日本語では「活版」である。「鉛・スズ・アンチモンの合金」だそうだ。
なぜその組み合わせなのかというと、液体が固体になる際に、(水と同じように)体積が増加するためなのだそうだ。固体になる際に体積が増えるから、細かい活字の「型」の隅々まで、合金が行き渡るのだそうで。全く知らなかった。
ついでに「活版」は"Movable Metal Type"の日本語訳であること、初めて知った。ここ数年、これらの「駄文作成」の際は、ずっと"MovableType"に触れていたにも関わらず...。
この本は、ある程度自然科学の知識がある人にとっては、とても面白い本だと思います。もちろん、現役の高校生であっても、読破する価値はあるでしょう。
同僚の化学教諭、この本を自腹で買ったらしい。すごい。彼女のホームルームには、この本が置いてある。生徒は幸せじゃのう。
なお、ヌルい私は、職場の図書館で借りたのでしたとさ。