書評『"不機嫌な"太陽 -気候変動のもうひとつのシナリオ』

初版196ページ、8章「宇宙気候学のための行動計画」8節「今日の気候変動についての建設的な見解」の冒頭「予報士による長期気候予報の問題点」から引用

 宇宙線が気候変動を引き起こす重要な要因なのに、その予測ができない現時点で、数十年先の確定的な気候予報を市民に提供しようとする試みは、いかなるものでも科学的には軽率なことである。それに、また、為政者を誤った方向に導いたり、国民に、地球の気温の上昇、または低下により危険に晒されると不適切な忠告をしたりする可能性がある。コンピューターにより気候をモデル化した開拓期である1970年代に、プリンストン在住のジョセフ・スマゴリンスキー(Joseph Smagorinsky)は、早くから警鐘を鳴らしていた。それは、今でも真実のように思われる「間違った気候予報を出すぐらいなら、全く出さないほうがましである」。
 コンピューターは、その当時より性能が大幅に向上しているが、気候モデルにはまだ仮定や簡略化が用いられているので、疑わしさが増えているように思われる。地球の気温への炭酸ガスの影響の可能性は、今でも、気候モデル作成者の自由裁量により決まり、幅広い範囲内から選ばれた予測値に依存している。
(中略)
 気候とは関係なく、化石燃料消費の節約を要請する理由は、他に幾らでもある(中略)たとえば、1.健康を害するスモッグをできるだけ削減するため、2.この惑星の限られた燃料資源を長持ちさせるため、それに、3.貧しい国のためにエネルギー価格を低く維持するため、というようにである。


読んでいて、気持ちの良い本であった。(アマリンク)
特に、上に引用した部分に激しく同意した。


この本の内容をごく大ざっぱに言うと、"太陽の活動が弱くなると、地球の大気低層に宇宙線が入り込みやすくなり、その宇宙線が雲の凝結核を量産する。大気低層の雲は太陽光線を反射するため、地球を冷やす作用を持つ。これらの知見は「南極等の氷床コアの分析」「海洋の堆積物の分析」「大規模かつ長時間の霧箱による実証実験」「貝化石などにおける同位体比の分析」「宇宙空間に存在する鉄元素由来のγ線分布から類推される超新星出現の歴史」その他によって、発見・補強されてきた"ってトコ。

杉並区の図書館に借りた(そして、大幅に延滞した)のですが、手元に置きたく(自腹で買いたく)なった本です。
とりあえず、Amazon のカートに入れました。


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