大学では地学を専攻した私である。冥王星絡みの話を記さないワケにはいかないだろう。
「太陽系の惑星を12個と"定義"する可能性あり」というニュースを最初聞いた時、全然ピンと来なかった。冥王星の衛星とされていた「カロン」と、思いっきり小惑星帯に存在していた「セレス」、その2つの天体が「惑星」となるというのは、かなり無理があるように感じた。また、太陽系で冥王星よりも巨大な天体が発見されたというニュースも聞いたことがあった。その「冥王星よりも大きな天体も見つかっているんだよね~」って事実は、今年も中学2年生に天文分野を教える際に伝えていた。
私自身は太陽系の惑星の並び順を「水金地火木土天海冥」として覚えた。冥王星の公転周期が248年ということも多分同時期に知った。自分がほんの数年しか生きていないコトと、ヒトの寿命約80年を把握しつつあったその頃、248年というとんでもなく長大な時間が存在することに驚きを感じた。
後に、「水金地火木土天"冥海"になったよ」って話を聞いた時、かなりの違和感を覚えたことも鮮烈に記憶に残っている。改めて調べてみたら、冥王星の方が海王星より太陽に近かったのは、1979年から1999年の話なのだそうだ。私が小学校3年の頃に、海王星と冥王星の守備位置変更が行われたわけだ。
ここ数年、冥王星と同じ様な由来の天体が続々と発見されていることは知っていたが、冥王星が「惑星」という地位を剥奪されることになるとは予想していなかった。何となく、冥王星の大きさを超えたカイパーベルト天体(ウィキペディアへのリンク:以後ウィキリン)は、全て「惑星」という扱いになっていくのだと思っていた。
冥王星は英語で Pluto であり、ギリシャ神話界にいらっしゃる「冥界の王」という意味があるコト、いつの間にやら知っていた。また、超ウラン元素の代表であるプルトニウム plutonium も同じ語源なのだろうと気づいた。
私が数年前まで知らなかった言葉に「冥王代」というものがある。地球における地質時代(ウィキリン)の区分の1つであり、岩石が残っていない時代(地球が誕生してからの数億年間)を指す言葉だそうだ。
今回、冥王星が「矮惑星 dwarf planet」というグループに入ることになったらしい。今日知ったのだが、「矮星」は dwarf star の訳語なのだそうだ。私はドワーフと聞くと、昔の RPG の雑魚キャラを思い出す。専門用語の和訳というのは難しそうなものであると思う。
冥王星はヒトに発見されてから数十年を経て、その名の通り「惑星界」でもなく「星くず界」でもない「冥界」に入っちまったというコトになるのだろう。
今は夏休みなのだが、職場に行くと生徒に会う。
冥王星が惑星でなくなったというニュースが報道された後、数人の中学生から「先生、冥王星がぁ…」という話題を振られた。何となく嬉しいものであった。
なお、職員室でもちょっとした解説を求められたので、私が知る限りのことを話しましたとさ。