石および医師との遭遇 その2

「コッ!」
ちょっと痛かった。
数秒の後、右の額に冷たいものを感じた。手をやってみた。
額を離れた私の右手は赤く染まっていた。

都会で適当に石ころを拾った場合、結構な割合でコンクリートが破砕されたものに出会う。私のアタマに当たったのも、そんな石ころの一つだった。長径は数cmだったろうか。それほど巨大な石ころでは無かったのだが、コンクリートが付着しているため、部分的に尖っていたようだ。ちょうど、そのコンクリート部分が生え際に当たったのだった。

鼻血もそうなのだろうが、頭部は小さな傷でも豪快に出血することが多い。私の額もそうだった。
出血部分を直接見ることができないため、傷の状態が分からないのだ。これは不安だ。とりあえず、ティッシュペーパーを傷に当て、家へ向けて走り出した私だった。

しかし、私はまた驚愕の事実に遭遇した。
走り出すと心拍数が上がり、血圧も上昇する。当然の事ながら、走れば走るほど、血は吹き出してくるのだった。かといって、のんびりと歩いていては失血死の恐れもある。
走るわけにも、歩くわけにも行かないことを悟った私だった。そんなワケで小走りで家まで戻ったのだった。これは非常にもどかしい時間だった。きちんと西武池袋線の踏切にも捕まったような記憶があるが、定かではない。


帰宅できた私は親の勧めに従い、近くの医者に行ったのだった。
迫り来る失血死の恐怖におびえながら、近くの医院にたどり着いた。

お医者さん曰く「もう血も止まってますし、縫う必要もないでしょう。」
折角だから、一針くらい縫って欲しいと思った私がいた。


今でも、そのハゲはばっちり残っている。ほんの数ミリ四方のハゲであるが。
ただ、そのハゲについて、ひとつ恐ろしい事実がある。

ハゲができた当初、そいつは額の生え際から奥深くに存在していたハズだ。その怪我から20年以上経過した現在、そのハゲはだいぶ額と同化しつつある。
当然の事ながら、ハゲは移動していない。生え際が移動していったのだ。
これほど恐ろしいことは無かろう。

歳はとりたくないものである。

ここにあるのは2006年6月26日 21:19の日記です。

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