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「成体のサルにおける色覚異常の遺伝子治療」に思う

2009/11/13 上梓

「Nature 今週のハイライト: 色覚異常の遺伝子治療」から
http://www.natureasia.com/japan/nature/updates/index.php?i=74121

Nature 461, 7265 (Oct 2009)
視覚などの神経機能の発達には決定的に重要な時期があり、それは青年期に入る前に終了すると広く考えられている。そのため、例えば先天性視覚障害をもつ成人の遺伝子治療は不可能だと思われることが多い。しかし、二色型色覚をもち、赤緑色覚がヒトとは異なるリスザル成獣を用いた実験で、遺伝子治療によって網膜細胞の一部に第三の光色素(ヒトオプシン)を導入できることがわかった。導入の結果、リスザルは新しい次元の色覚をもつようになった。この成果は、ヒトに広くみられる先天性視覚障害の治療法につながる可能性がある(現在、臨床試験中)だけでなく、視覚処理を行う神経に著しい可塑性があることを実証しており、三色型色覚の進化の道筋も示している。
Letters to Nature p.784

 上の記事は、つい先日発見しました。なので、とうとう作文する気になったのです。Nature Japan にアカウントを持っていないと見られないみたいです。一応、私は Nature Japan にアカウントを持っています。
 上のアドレス直打ちだと、アクセス拒否されます。しかし、何故か Google 経由だと見られるみたいです。検索結果の一番上です、多分。
"遺伝子治療 色覚 nature"でググッた結果

 私が「この研究結果に関する記事」を最初に見たのは、今年の9月17日です。ナショナルジオグラフィックの日本版サイトは、かなりな長文でした。そして、かなり曖昧さを含んでいました。
ニュース - 科学&宇宙 - サルの色覚異常、遺伝子注入で治癒(記事全文) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

 最大の疑問は、この眼科医のおっしゃるとおりです。
清澤眼科医院通信:1034 サルの色覚異常を遺伝子注入で治癒という記事が出ているらしい
 私も、ナショナルジオグラフィックの記事に於ける「網膜への細胞注入」という部分が、納得いかなかったのです。それは「遺伝子治療」とは呼ばないでしょうから。

 上記ブログ以外にも、いろんなサイトでこの「色覚改善のニュース」が取り上げられていました。
 一番多かったパターンは「記事本文だけをコピペ」してエントリにする、ってヤツ。そもそも、著作権侵害でしょう。そういうクソみたいなブログ、私は存在意義を感じません。気になったニュースサイトを「ブックマーク」しておけば、それで話は済むでしょうに。
 私が次に不思議に思ったのは、ほとんど全てのブロガーが「早くヒトに応用されるとよいですね」って感想を述べられていることです。あまりにも脳天気に過ぎると思います。このニュースに肯定的でない立場をとっている方は、現時点でもお一人しか発見できていません。
健康情報 気になるニュースをお伝え: 色覚障害のサル、遺伝子治療で16色を識別

 私は「この遺伝子治療が、早くヒトに応用されると良い」なんて、全然思いません。だいたい「遺伝子治療」なんて、危険なことこの上ないでしょう。
 例えば「網膜 遺伝子導入 ベクター」で検索してみます。いろいろな「ベクター候補」が挙げられているようです。
 「ベクター」とは、遺伝子の「入れ物・運び屋」であり、ウイルスが用いられる場合が多いようです。遺伝子治療のもっとも危険な点は、遺伝子改変による細胞のガン化である、と私は思います。ES細胞やiPS細胞も、ガン化の危険をどうやって回避するかについて、現在盛んに研究されているわけです。
 私は、網膜の遺伝子治療なんて、金輪際ゴメンです。

 そもそも、改善すべきは網膜ではありません。もちろん、熟した木の実の色でも、焼けた肉の色でもありません。町中の様々な「ヒトが作るもの」を、いちいちキチンとデザインすれば良いだけの話なのです。「デザイン」は視覚的なものだけではありません。盲人や聾者も考慮に入れる必要があります。
 例えば、駅の時刻表や路線図。醜悪なものも、まだたくさんあります。そんな中、東京の地下鉄路線図が改善されたことは以前書きました。今年になって知ったのは、東急電鉄の時刻表の素晴らしさです。以下のサイトで教えていただきました。
東急時刻表の色づかい: 舎密亭日乗

 と、2ヶ月温めていた、遺伝子治療(?)についての話題などを、やっと記してみました。