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国立科学博物館主催

平成16年度理科担当教員研修<地学コース>報告書

2004年夏休みの宿題

 

日時
   2004年7月26日(月)~28(水)
場所
   26日:多摩川河原
   27・28日:国立科学博物館新宿分館
講師名
   加瀬友喜・重田康成・谷村好洋
テーマ
   古生物研究方法-貝類・微古生物
概要
   26日 10:00~14:00  多摩川河原にて貝化石・微化石(主に有孔虫)採集
   27日 9:30~15:30  新宿分館にて貝化石の処理(標本作成)
   28日 9:30~16:00  新宿分館にて微化石の処理(プレパラート作成)
報告者
   小川正樹

<1日目>

 アウトドアサンダル・短パン・半袖シャツ・帽子という格好で、ハンマー・タガネ・新聞紙・ルーペ・筆記用具・タオル・軍手・弁当他を用意し、集合場所の小田急線和泉多摩川駅へと向かった。
 集合後、徒歩にて駅南側の多摩川土手へ移動し、宿河原堰堤下流の中州へ向かった。宿河原堰堤付近は、昭和49年(1974)9月1日に起こった多摩川堤防決壊の被災地であるという。記録映像として多摩川決壊の様子をテレビで見たことがあるが、その場所が何処なのかは知らなかったので勉強になった。詳しくは以下のサイトを参照のこと。
 http://www.city.komae.tokyo.jp/index.cfm/28,336,138,60,html
 通常、川の河原や中州には砂粒や石ころが転がっているものだが、確かに堰堤下流ではある程度固そうな地盤が露出していた。多摩川に限らず、善福寺川など都内を流れる川でも、その河床には岩盤が露出していることもあるが、簡単にはその岩盤へたどり着けない場合が多い。
 今回紹介された、和泉多摩川の中州は基本的に空気中に露出しており、なおかつ深さ20~30cm程度の流れを横切れば簡単にたどり着けるため、小中学生の実習場所として使うことも可能とのことだった。
 地盤の露出(露頭)は宅地を造成している際などに見かけることがあるし、千葉県などでは地層が褶曲している露頭なども各所に見られる。しかしながら、そういった露頭はほとんどの場合において地権者が存在し、よほど理解のある地権者でなければ団体の学生などに化石掘りをさせてくれることは無いそうである。高校には選択で地学の授業があるので、化石掘りの実習をしたい場合にはこの場所に出向こうと思う。
 その中州の露頭自体は第四紀前期更新世(百数十万年前)の飯室層という地層にあたるそうで、ハンマーや鶴嘴で簡単に掘り起こせる砂質泥岩であった。この点も生徒実習に向いているのだそうだ。「化石掘り」というと、ハンマーでガンガン岩石を叩いていくイメージが強い。しかし、固い露頭相手にハンマーを振るうのは、防護眼鏡が必需品であるし、生徒を引率する際は岩石の破片による事故の危険がつきまとうのでお薦めできないというのが講師の弁であった。私自身も久々に(マイ)ハンマーを手に持ったのであったが、確かに私も硬い岩石にハンマーを振るう際は、必ず防護の「ダテ眼鏡」をかけていたものである。
 場所によっては日本でも古生代の地層の露頭があるのは確からしく、私自身が大学の巡検で岩手県大船渡市に連れられていったことを数年ぶりに思い出した。そのときは団体でバスをチャーターして山の中に入っていったのだが、中学高校の授業で生徒を引率するには交通の便がよいことも野外実習の必須条件であろう。
 その飯室層の露頭は数年前まではもっと状態が良かったそうであるが、現在では堰堤の改修工事により露頭が掘り起こされ、その上に人工的な石畳が造られてしまったため、化石の発掘は以前より難しくなったそうである。この露頭についての詳しい文章は以下のサイトにある。私にとっては研修の良い復習となった。
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/8946/fossiltop.html
 この地層では二枚貝や巻き貝、微生物(主に有孔虫)の化石を採取し、1日目の研修を終えた。
路頭の画像

<2日目>

 研修の2日目は、JR大久保が最寄り駅となる「国立科学博物館新宿分館」へ場所を移して行われた。1日目に発掘した二枚貝や巻き貝のクリーニングと標本化の実習を行い、午後の最後には国立科学博物館の化石コレクション(フタバスズキリュウ等の実物化石)を見せてもらった。
 化石のクリーニングには千枚通し・歯ブラシ・刷毛・絵筆などを用い、補強には水で溶いた木工用ボンド・瞬間接着剤(アロンアルファ)・アセトンで溶かしたパラロイドという樹脂などを用いた。化石の処理に定石というものはなく、「化石をどう見せたいか」という目的によって、クリーニング・標本化のやり方も異なってくるとのことだった。飯室層自体がやわらかい砂質泥岩であり、その中に含まれている貝化石も強固ではないため、かなりの貝化石を破壊してしまった。何気なく博物館に飾られている化石も、標本にするためにはかなりの根気と熟達した技が必要であることを思い知らされた。とりあえず、私自身はツメタガイ(肉食の貝)の一種の標本を作製した(現在自宅に飾ってある)。
 私を含め、受講者が採集した化石は量が少なく、処理に不慣れなため、かなりの量を破壊してしまっていた。そのために午後の後半は手持ちぶさたになってしまい、新宿分館内の標本室を案内してもらうことになった。
 博物館などにある恐竜化石等は、ほとんどの場合「レプリカ」なのだそうである。実物の化石は大事に保管しておき、その模造品を一般大衆へ向けて展示するのが普通なのだそうだ。実際に苦労して発掘した化石に穴を開けてしまうことなどはほとんど無いので、博物館等で展示されているような「鉄骨を内部に通して整形され、あたかも観覧者に向かってこようとする形の恐竜」などは、ほとんどがレプリカであるとのことであった。その話を聞き、ちょっとがっかりした私だった。

<3日目>

 研修最終日は微化石の処理法の講義と実習だった。堆積岩から微化石を取り出す方法について学習し、その微化石のプレパラートを見せて貰った。後半は砂粒の中から微化石を選び出し、プレパラートへ並べて接着していく実習を行った。
 岩石中の微化石を取り出すためには、微化石を破壊しないようにしながら岩石(堆積岩)を構成する粒子(鉱物)をバラバラにしなければならない。その方法としては岩石を熱湯で煮るのが基本なのだそうだ。場合によっては硫酸ナトリウムの飽和水溶液(熱湯)を岩石に染みこませて放置し、硫酸ナトリウムの再結晶によって岩石をバラバラにした後に熱湯で煮るとのことであった。古典的というか、地味な方法を用いるものなのだと変に感心した。
 私は生物学について勉強するほど、幼い頃に考えていたよりも「種」というのは曖昧なものであるということに気付いていった。直径1mmにも満たないような、微小な生物の遺骸を同定することに、果たして何の意味があるのか、あるいは意味が無いのかは分からない。しかし、これら微生物の化石を採集・分類し、図鑑を作成した人々には畏敬の念を感じた。

以上で報告を終わる。


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